Phase Of Bhallala

(※バラーラ期に陥った筆者がバラーラデーヴァに関する様々な事をこちらに記載していきますが、個人的な思い入れが満載です…ご了承ください。まだまだ追記予定です。Bhallaladeva Jai Ho!)

バラーラ期とは何か

ツイッターのTLに表れたタグ

初出は望月さんのこのツイート。

また、noteにも記事を書かれています。
【映画感想/考察】「バーフバリ」の過剰摂取による諸症状【バラーラ期】

#バラーラ期

『バーフバリ』鑑賞者が、バーフバリ初見の激しい興奮が一通り通過した後、バラーラデーヴァについてツイッターで語るとき(主にバラーの側に立ち考察する場合)に使われるるタグとして#バラーラ期は広まっていった。

謎が多いからこそ語りたい

完璧な”悪”とその背後の感情

バラーラデーヴァについての考察を深めていくと、彼が単純な”悪”ではない事がわかる。
物語には強く賢明な者たち(シヴァガミ、カッタッパ、アマレンドラ、デーヴァセーナ)が登場するが、彼らを見事なまでに誘導し騙し、追い落とし、マヒシュマティを奪い取っている。

バラーは、バーフを王にしようとしていた実の母の感情をコントロールし宣言を巧みに操作、最終的には弟の死刑を宣言させる。
また、弟アマレンドラが「父」と慕ったカッタッパの手で、アマレンドラを殺させ、カッタッパに壮絶な罪をおわせる。

逃げる母を、背後から自らの手で弓矢で射抜き、弟の嫁・デーヴァセーナを拘束し幽閉、デーヴァセーナの故郷・クンタラを焼き滅ぼした。

己の道を塞ぐものを冷静に排除していく其の様は、同情の気持ちすら抱かせてもらえぬほどだ。しかし、その隠された彼の感情について想いをはせる時、常人では耐えられないよう苛烈さがそこにはあったのではないかと想像する。そして、兄弟として育ったバーフとの対比を思った時、”しんどい”という感情が発生する。


バラーラデーヴァの徹頭徹尾 自らを貫いた強さは、強烈な魅力となって私たちの心をつかんだ。
このページではバラーの悪としての魅力について、更に語っていきたい。


運命に抗った王


『バーフバリ』という物語は、二人のバーフバリ(とりわけアマレンドラ・バーフバリ)のカリスマ性、徳の高さを称えるものだ。

その存在を美しく際立たせるためには、同等の力を持った存在による”対比”が必要だ。

アマレンドラが慈悲に満ち溢れた存在なら、徹底した無慈悲さを
アマレンドラが弱者を救う優しさがあるならば、弱者を切り捨てる冷徹さを

”バーフバリ”が、シヴァ神に祝福されこの世に導かれたのならば、
バラーは神を否定し神に抗い自分の手で掴み取る必要があった。

"He is against anything that is good."

souce:Rana Dagubatti As Bhallala Deva | Baahubali - The Beginning(Youtube)

バラーが非道を貫いた発端は、王位継承者を決めず、二人の王子を”レース”にのせた事にある。
先代・ヴィクラマデーヴァの死後、アマレンドラもしくはバラーラデーヴァのどちらかをすぐに王位につけずに、先延ばしにしたシヴァガミの真意はなにか。

個人的な見解だが、、 シヴァガミは最初から”アマレンドラありき”だったのではないか。
王宮の対立や混乱を避け、アマレンドラが成人し力を蓄える間の”当て馬”として、バラーラデーヴァを、王座を争うもう一人の王子として担ぎ上げたように思えてならないのだ。

 バラーは何を思っただろうか。
アマレンドラが神と運命に愛された存在で、自分はそれの比較のために存在するのかと。
己の存在を、神でもない誰でもない己の手で肯定して見せようと思ったのではないか。

"From his childhood,
Bhallaladeva never bellieved in God.
But he loved the idea of deity hood with him being God.."
souce:Rana Dagubatti As Bhallala Deva | Baahubali - The Beginning(Youtube)

He loved the power of giving life or taking it away from pepele.
(by S.S. Rajamouli)
自分の手で創り、与え そして奪う。

バラーラデーヴァの治世

"残虐非道な暴君"として表現されるバラーラデーヴァだが、アマレンドラとシヴァガミの死後の独裁政治はどんなものだったのだろうか。
もし単に王座を手に入れたかっただけの、愚かな暴君であったなら、強大な軍事国家であるマヒシュマティ王国を維持するのは難しいだろう。
しかし----バラーラデーヴァ独裁政権下のマヒシュマティは、以前よりも国力を増しているように見えるのだ。

巨大な武器工場

『バーフバリ伝説誕生』に登場する広大な武器工場。これは25年前のマヒシュマティの描写には出てこない場所である。
おそらくバラーラデーヴァ政権下になってから作られたものだと思われる。これだけの大きさの工場が稼働しているということは、常に戦時下だったのではないか。(他国を侵略し、パルチザンを粛清していた?)
そしてまた、それだけの財政力があった事も表している。

武器商人からの売り込み

これだけの武器工場があるにも関わらず、武器商人からの売り込みが行われている。
このアスラム・カーンはカーブル(現アフガニスタン)よりわざわざ出向いてくる。それは、マヒシュマティが大口の取引相手として魅力的な大国であると、カーブルまで名を轟かしていた事を表している。

祝典の参列者から読み取れること。

25年前の戴冠式では、周辺諸国の国賓が多く参列していたが、黄金像建立祝典には、式典を盛り上げる人々のみである。このマヒシュマティとは異なる文化圏の人々は侵略下に置かれた国々の人なのではないだろうか。

ローマ水道があった?

バラーラデーヴァ政権下でのマヒシュマティを俯瞰したカットであるが、画面中央より上に注目していただきたい。
ローマ水道を思わせる建築物が縦横に走っているのが見える。
アマレンドラが市井に下った時に、民と共に水汲みをしていた様子が描かれているが、当時水の供給は困難を伴うものだった。もしこれが水道であるならば、マヒシュマティはかなり高度な土木技術を持つようになった事を表している。 (@SAKAKI_76さんのツイートを参考にしています)

先進技術に貪欲

猿神ハヌマーンの武器ガダーを模し、改良した伸縮自在の棍棒。
エンジンのない時代に高速回転する刃を持つ戦車。 そして、磨いた水晶を重ねた望遠鏡。
伝統を尊重しながらも新技術を愛し、取り入れ、さらなる改良に予算をつぎ込む。 スパイの使い方が巧みなバラーラデーヴァだが、外国商人も積極的に受け入れているのだ、外国から売り込みがくるのだろう。 それを買ったままではなく自分に合うよう改良させるバラーラデーヴァの支援で工房が栄え職人が育ち、民間に技術が広まるのも時間の問題だ。
LRさんによる"バラーラデーヴァについて私たちが語るべき5つのこと"より引用

舗装道路と金を持てる生活

『バーフバリ伝説誕生』のバラーラデーヴァの圧政を表す描写として、市民から金銀を強制的に没収するシーンがある。黄金像建立に備え、国中の金を民から没収したのだろう。
しかしこの荷台に山と積まれた金を見ると、それだけ民が財産を蓄えられるだけの豊かな生活をしていた事がわかる。
そしてまた、背景に映る道は綺麗に舗装され、ホームレスのような人々は見当たらず、建物や人々の服装もまた生活の豊かさを物語っている。

以上の事から読み取れるのは、バラーラデーヴァの治世ではマヒシュマティは以前に増して強大で豊かな軍事国家になっていただろうという事だ。都市のインフラの整備に力を入れ、人々の生活は豊かになっていたはずだ。
ローマ帝国が反映したのは水道、排水溝、道路のの整備によるものであり、バラーラデーヴァがこれらを積極的に行っていたのならば、優れた統治者であると言わざるを得ない。

デーヴァセーナの存在

弟のアマレンドラを亡き者にした後、その妻であり義妹であるデーヴァセーナを幽閉したバラー。しかしそれは単なる幽閉ではなかった。王宮の中央広場とも言える場所に、剥き出しの檻を置き彼女を鎖につないだ。まるで獣を飼うように。民全てにその様子が知れ渡るように。
25年経て、カッタッパにデーヴァセーナの開放を懇願されても「苦しみを与え続けろ」と言い放つバラー。その執着はどこからくるのか。

それは愛なのか

劇中にバラーの正妃は登場しない。これについては、監督が次のように言及している記事がある
「バラーラデーヴァはおそらく誰とも結婚していないだろう」→Bhallaladeva "バドラ王子は誰の子なのか"
もしかしたらバラーにとってデーヴァセーナは自分の妃だったのではないか…。

アマレンドラへの執着

バラーラデーヴァにとってデーヴァセーナを手に入れることは、単に美しい王妃が欲しかったからではない。むしろ、美しい王女など欲したらいくらでも手に入れられる立場にいたはずだ。

弟・アマレンドラから奪う事に意味があったのだ。

憎しみで得た”勝利”

バラーラデーヴァはデーヴァセーナから夫を奪い、子供を奪い、国をも奪った。彼女の世界からありとあらゆるものを奪い、現世でつながりのある人間を自分だけにしたかったのだろう。
彼女の感情の矛先を全て自分に向けさせるために。その感情が憎しみであっても構わなかった。


マヒシュマティ王国への壮大な復讐

滅亡をより鮮やかに彩る”繁栄”

バラーラデーヴァは幼いころから只管にマヒシュマティを思い求めたが、常に拒絶されてきた。マヒシュマティも国母シヴァガミも、バーフバリを向いていた。
"徳"という、曖昧なものを掲げては、合理的で優秀であった彼を無視し続けたのだ。
---------------ならば。
"徳"などでは到底到達できない、強大さを持つ大国に自分の代で仕立てあげて見せようとしたのではないか。建国以来最も優れた王として、誰しもが認めざるを得ない程の豊かさをこの国にもたらそうとしていたのではないか。

そして、バラーラデーヴァが亡き後はこの豊かな国を誰も維持することが叶わず、無残に滅びていく事を計算していたのではないかと思う。(バドラ王子を後継者として育ているとは到底思えないのだ)

バーフバリを追い求めた人々に豊かさを与えたのは自分だと思い知らせ。
そして最後は自分の命が消えると同時にそれらを奪って見せようと、していたのだろう。


マヘンドラを誰よりも待ちわびたバラー

国母と民に圧倒的に支持されていたアマレンドラを、自らの手を汚さずに国外追放させ、最後には国母に"処刑"を決断させたバラー。
マヒシュマティの玉座をわがものにするために、誰よりも情報を把握し、>細大漏らさず、完璧な筋立てで計画を遂行してきた。
マヒシュマティの権力を手中に収めるため、完璧に計画を遂行してきたそのバラーが、マヘンドラの死の確認をしなかったのはなぜなのか。


命の河---バラーの流れゆく先

映画の最終盤、バラーラデーヴァがデーヴァセーナによって生きながら焼かれ命を絶つ。その後カットが変わり、幾日後のマヘンドラバーフバリの戴冠式のシーンになる。マヘンドラが王としての宣誓をし、復讐劇の決着が着いた事がわかる。

しかし…その後、バラーの残した黄金像の首が河に流されるカットへと変わる。それはバラーラデーヴァのもうひとつの最期でもあるようで、美しいシークエンスなのだ。

追記予定